イベント・活動報告|大阪大学
【開催報告】2024年7月18日(木)、いのち会議 経済・雇用・貧困アクションパネル「共感経済と共助社会に向けた企業のあり方~国連グローバルコンパクトとグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの活動を中心に~」を開催しました!
2024年7月18日(木)、いのち会議 経済・雇用・貧困アクションパネル「共感経済と共助社会に向けた企業のあり方~国連グローバルコンパクトとグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの活動を中心に~」を開催しました。話題提供者の方々含め会場に15名、オンラインで39名が参加しました。以下に概要を報告します。
堂目 卓生(大阪大学総長補佐、社会ソリューションイニシアティブ(SSI)長、「いのち会議」事業実行委員会副委員長)「共助社会と共感経済」
✓ 近代社会の基本構造:capable「助けるいのち」中心の分配・包摂
→目指すべき未来社会:vulnerable「助けられるいのち」中心の共助・共感
✓ 経済:economy:家の法、資源分配、経世済民:民を貧困から救い世を治める
→民間経済、公経済、連帯経済も主体が違うがいずれも財・サービスの供給を意味
✓ 共感(民間)経済:民間企業を中心に、投資家・労働者・消費者の共感に基づき、「いのち」を支える経済活動を行う
✓ 共感(公)経済:政府自治体を中心に、納税者の共感に基づき「いのち」を支える経済活動を行う
✓ 共感(連帯)経済:中間組織(NPO・NGO)を中心に、市民の共感に基づき「いのち」を支える経済活動を行う
⇒「いのち(人間、自然)」に対する共感が重要なキーに
氏家 啓一(GCNJ事務局長):「企業のサステナビリティについて:「誰ひとり取り残さない」という視点から」
✓ 国連グローバルコンパクト(UNGC):1999年ダボス会議で提唱され2000年設立
→2003年に日本でも発足(GCNJ)、500を超える企業が参加し国連に声を届ける
✓ UNGCの理念;共通の価値観・原則に基づく「人間の顔を持つ」グローバル市場
✓ 経済活動は歪み?課題解決?:拡大を続ける経済格差と対応(例:ロールズの格差の原則「最も不遇な人々の期待便益を最大に高める」)
✓ Earth Overshot Day:資源消費が資源再生産を大きく上回る(2023年は8月2日)
←産業革命、緑の革命など生産性の大幅向上から、IT革命(DX)、グレート・リセットなど新たな経済・社会システムの構築に向けて動き出す
✓ 持続可能性の歴史:1972年のローマクラブ(成長の限界)→2000年頃からMDGs・SDGsとともに責任投資原則やビジネスと人権などの原則の確立へ
*江戸・明治期の商売倫理:角倉素庵、渋沢栄一、近江商人など
✓ アナン(1999):企業自らが直接関わることで変化をもたらす→UNGC・GCNJへ
✓ UNCGのミッション:企業の厳守すべき10の原則、株主のみならず幅広い社会のステークホルターへの貢献、ESG評価、未来社会を意識した行動(ダボス2020)
✓ 安心・安全への関心の高まり:企業の信頼、情報提供・透明性が重視されるようになり、長期的な企業の価値の向上(長期的投資における非財務情報の重要性)
✓ 企業と社会:社会への負→正の影響を与える鍵となる「環境」「人権」、最も遅れている・脆弱な立場にある人々に手を伸ばす(←SDGsの理念、原文にも記載)
✓ SDGsのゴール構成:経済⊂社会⊂環境、イノベーションとビジネスと人権、労働者の権利・環境基準の遵守がセットで記載。企業が貢献出来る範囲は広い
✓ 消費者志向経営:消費者との共創・協働(エシカル購入)による社会価値向上
→売り手よし、ステークホルダーよし、社会よしの現代の「三方よし」へ
伊藤 武史(大阪大学SSI教授):「売り手と買い手の力で、世間良しの「三方良し」を実現する」
✓ 共助社会の歴史:古代社会、アダム・スミス、助け合いの手段としての貨幣
✓ 万博:開発・発展の象徴→誰一人取り残さない「いのち」輝く未来社系志向へ
←SSI・いのち会議の取組と共通する未来社会へ想い
✓ 要としての企業:社会の公器、「社会への奉仕」(オムロン創業者 立石一真)
✓ 売り手としての企業:(顧客・経済・社会)価値の創造→協力しながら社会を改良
→外部不経済(環境など)を市場に取りこみ、イノベーション+顧客負担で改善へ
⇔多くの企業は守勢を凌いでかろうじて生きている状況、どう打開するか?
✓ 求められる経営モデル:業界におけるESGでのリーダーシップ、社会にとって適性価格(労働者・環境などへの負担反映)、市民への理解
✓ ESG診断・サステナアプリの開発:会社や商品単位でESGに関する外的評価(各種データなど公開データ)→業界のレベルアップ→共感に基づく購買活動の促進
✓ 買い手の共感:売り手の価値・行動に共感し、ともに行動・支援することが重要
→買い手が良い企業の商品を購入→良い企業・業界が増える→良い社会へ
ディスカッション
✓ フェアトレードがベースの欧州と、SDGs・エシカル中心の日本の状況の違い
→日本はSDGsへの(直接的)関心は高いが、逆に商品ベースでみると日本はどれがエシカルな商品かわかりにくい状況なのに対して、逆に欧州では商品に関連するデータ・情報が多く掲載されている
✓ 足腰のしっかりした大企業はともかく、中小企業がどう消費者にアプローチすればいいか
→経営者のサステナビリティ戦略を考える上で、今後消費者側の視点でどうアプローチ出来るかは非常に重要
✓ 社会に出る前の段階にいる学生に消費者の意識について伝えるのが重要な一方で、自分の財布にあるお金には非常に敏感。どういう風に教育していくべきか?
→お金の価値についてどう教えるか。寄付等によって社会に還元することでどういう効果をもたらすのかなど、お金が社会にもたらす広い影響などについて教育に上手く組み込む必要があるだろう。エシカル消費やビジネスと人権の話などはその文脈の中で重要に。
✓ 2010年代前半のポストMDGs→SDGsの議論において、開発の文脈に企業が関与することがより重視されるようになる中で、日本がなかなか参加出来てなかった。2024年現在の日本企業の存在感はどうか?
→一番大きな違いは投資家が企業のESG・サステナビリティ、息を長く活躍できるかどうかを気にするようになったこと。またSDGs Impactなど国際的な基準・枠組みによる(ウォッシュを防ぐ)ガイドが存在するようになった。日本企業のいいところは一度理念(SDGsやESG)を掲げたらその看板を下ろさないこと。
✓ 共感経済をうまく回すためには、より多くの企業、そして企業以外の自治体やNPO、消費者が企業と共感に基づいて連携してより多くの矢印を繋ぎつついのちを支えていかないといけない。その際にどのような形で連携を促進し、枠組みを作ったり・改良すべきか
→企業設立・企業活動の初心を忘れないように、経営側と労働者側がコミュニケーションを取れる場を上手く設ける
✓ 欧州における特殊な文脈の人権の歴史から世界人権宣言のような普遍的なものになってきた歴史。その中で広まる鍵になったのは他人への想像力に基づく共感の広がりだったのではないか。このあたりの議論との整理が重要だし、いのち会議はこうした文脈での広い共感を「いのち」という言葉に載せている。
→国際的には特に権利が絡む文脈では共通(common)が使われる事が多く、共感という日本語の定義についてある程度の共通認識が必要だろう。